『ぐるりのこと』のこと

ぐるりのこと。 [DVD]

ぐるりのこと。 [DVD]

TSUTAYAの100円レンタルで借りてきた。『ぐるりのこと』。洋画を見るパワーが無かったので、気楽に見れそうかなと思って借りる。ことさら期待して無かったけど、かなりいい映画だった。いやーかなりいい映画だった。ここ1年で見た中だと、『ハゲタカ』『ディアドクター』と並ぶくらい。



舞台は90年代の日本。主役は、木村多江リリー・フランキー。この2人は夫婦で、零細出版社に勤めるしっかり者の木村多江と法定画家でゆるゆるしているリリー・フランキー。この夫婦とそれをとりまく10年間を追った物語。


めんどうくさいけど、いとおしい。
いろいろあるけど、一緒にいたい。

正直最初の30分くらいは退屈で、よくある雰囲気だけのアーティスティックな邦画かと思った。とんだ勘違いだった。ほのぼのした雰囲気から、徐々に暗雲が立ち込めて、気付いたら陰鬱なトンネルの中に。重厚な内容が押し寄せてくる。見終わった後は複雑な気持ちだけど、確かなやさしい気持ちが芽生えてる。そんで、見て良かったなと素直に感じることができる。そんな映画だと思う。140分くらいあって、若干冗長な印象を受けたとこもあったけど、最後まで見る価値がある。劇的な転調やイベントは起きないけど、それでもダイレクトに心をハックされるような力があると思う。



舞台は90年代で、法廷画家であるリリーさんを通して、実際に90年代にあった重大事件の裁判が描かれる。現実の裁判を踏襲しているんだろう裁判シーンは、現実的な重さとエンターテインメント性が危ういバランスで表現されていると思う。この法廷のシーンは人の多様さ、そして主役夫婦との対比を感じる上で重要な意味があるんだろう。


とにかく木村多江がすごい。綺麗なのはもちろんなんだけど、何というかふり幅が尋常じゃないなと思う。とっても素敵。あとこの映画はあんまり音楽が流れないんだけど、後半に流れる音楽がストーリーとも相まってとても良く感じた。全部ひっくるめて、名作っていえると思う。この一本で、いろんな感情を味わうことができた。そういえば『ぐるり』っていうのは、『まわり』のことらしい。



今日も読んでくださってありがとうございます。あなたのぐるりはどんな感じですか??